1939年、Hewlett Packard (以下HPと記す) は計測機器メーカーとして、カリフォルニア州パロアルトで創立された。いわゆるシリコンバレーである。
HPは計測機器メーカとしても世界でもトップクラスの企業であり、その計測器は高性能・高価であることでも有名である。 社員の多様性を尊重した社風”HPウェイ”でも知られており、エンジニアにも就職先として人気があった。
そのHPも、Work Stationに進出し、引き続きPC・プリンタに進出し、いつの間にやら、IT部門が計測器部門よりも大きくなった。 傍目から見ていて、こんなB2Bの高級品メーカがプリンタのような低価格消耗品ビジネスで、よく成功したなと感心していたものだった。
そして1999年。HPは計測機器部門を分離独立させることを発表。名前はAgilent Technologies。
IT部門がスピンアウトさせてHPは再び、計測機器メーカになるというのならば、話はわかるが、これでは「軒先貸して、母屋を取られる」という構図ではないか?
ただ、株主視点で見た場合、測定機器会社でいるよりもIT企業になったほうは、HPは”良い会社”になる、ブランド価値があがる、株式時価総額があがる。
資本主義とは、無情というか、無常なものよ、と、その時には思ったものであった。
そして、2014年、Agilentは、バイオ・化学関係計測機器の会社となることと電子計測機器部門の分離独立を発表。
またもや、「軒先貸して、母屋を取られる」という構図の再現。 なるほどね・・・ 資本主義とは無情なものと、再び、思う。
その流れを図にすると以下のようになる。(HPのロゴとNYSEのティッカーシンボルの継承者を直線にして、計測機器部門を青色にしてみました。)
この図を見ると、アメリカでは、会社の規模を重要視するが、同時に利益率や一株あたりの利益も重要視していることが、見えてくる。
2000年頃だったら、計測機器よりもITの方が収益が見込める事業だったし、今だったら、成熟期にある電子機器の計測器よりも成長期にあるバイオ・化学の計測機器のほうが、投資対象としては有望に見える。
だから、Agilentというブランドはバイオ・化学計測機器部門が持っていく。
ひるがえって日本。直近ではセブン&iグループがイトーヨーカ堂の分離を米国投資家から求められている。数年前は、ソニーが電子機器部門の分離独立を求められていた。 数年前、業績が低迷している時、日立は事業分割を求められていたが、今はコングロマリットのメリットを享受している。 その例もあるし、分ければいいという訳ではないが、分離独立というのも、事業再生の道としてありかなと思う。
それにしても、HPの計測機器部門は、打たれ強い。このしぶとさには感心する。
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