1990年代まで、日本にとって「市場」といえば、欧米+日本でした。いわゆるG7です。人口で考えたら、5億人+アルファ程度でしょうか。

新興国が台頭してきた今、市場といえば、BRICsで30億人 (ブラジル; 2億人、ロシア; 1.5億人、インド; 12.5億人、中国; 13.5億人)、それにVISTAだのNEXT11等々を含みます。いわゆるG20でしょうか。
さらにそれに続く国々がいます。
こうなってくると、実は、日本にとっての市場の人口は40~50億人程度、いるのでしょうか?

実はこの10年間で、日本がアドレスできるマーケットは10倍に広がっていた訳です。むろん貧富がありますから、金額的には10倍にはなっていませんが。

ただ、日常雑貨・消耗品・シロモノ家電のマーケット、通信・エネルギー等のインフラ市場も、物量的にはそれ相応のスケールで拡大しているはずです。
90年代までの日本の設備投資・生産設備は、5億人のマーケットに対してのモノでした。
でも今は、生産設備は、50億人のマーケットを前提としたものでなければならないはずです。 しかも、高級品中心ではなく、廉価版を中心として。
日本の生産設備・体制は、この変化に対応しているのだろうか?
この変化に対応できていない事が、日本の電機メーカの凋落の一つの理由ではないか?

欧米企業は、労働集約の部分、資本集約の部分、すなわち、組立の部分を台湾・中国に委託して、そこで大々的に生産している。
日本企業が10万台単位で生産しているモノを、中国・台湾企業は100万台単位で生産している。しかも、複数の完成品メーカから生産を受注することでリスクヘッジもしている。

マーケットが10倍になっている訳ですから、そこには大きなビジネスチャンスがあるはずです。
ただ、90年の感覚に基づく設備投資・生産設備では生産量が少なくて、世界でプレゼンスが取れないし、かつ、生産規模がケタ違いなので仕入単価でも負けていて、中国・台湾に勝てない。

今回、シャープに出資した鴻海が10兆円企業と知って、私は驚きました。組立工程のみの企業なのに、松下・ソニーよりも売り上げがある訳です。アップル/Dell/HP等の販売価格でみると、更に大きいはずです。

日本の企業は、20世紀後半に世界の工場として生産ラインで稼いできた訳ですが、これからどうするか?

生産ラインで稼ぐつもりならば、生産規模を今の10倍に上げる必要がある。
アップルのように稼ぐつもりならば、設計・意匠等でのデザインで世界をリードする
IBMのように稼ぐのならば、先端技術・ソリューションで世界をリードする。
他にもいろいろな稼ぎ方はあるでしょう。

大変ですね。

ただ、この変化・トランスフォーメーションを日本企業にはビジネスチャンスとしてモノにしてほしいものです。