ウェブを見ていたら、このような記事を見つけた。

デジカメ市場はスマホに破壊されたという嘘
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8956

この記事は、二つの事を対比させている。

一つは、Snapchatを運営する米国Snap社のニューヨーク証券取引所にIPO申請。
その申請書類の表紙に、
– Snap社はカメラの会社である。
– 人々がSnapchatを使うということは、人々が生活やコミュニケーションの手段を改
善する偉大な機会を私たち (Snap社) に与えてくれている。
– 私たちの製品は人々が自己表現し、瞬間を生き、世界を知り、共に楽しむことを力
づける。
とある。 (鈴木訳)

もう一つは、ニコンが2016年2月に発表し2016年6月の発売予定であったDLシリーズの
発売中止。

この記事を、この対比を読んで思った事を書いてみる。

1) Snap社は自社を「カメラメーカ」と位置付ける。
これも、サービスとハードの融合の一つか。
でも、考えてみれば、人間の衝動の根源をたどっていけば、それは「見たものを人と
シェアしたい」ということであり、その共有手段は、かつてはフィルムに焼き付ける
ことであり、今は、SNSで友人・家族に公開することである。
キャノン・ニコンもこの人間の衝動の根源に、もっと早く立ち戻ってそこからDLシ
リーズの製品としての性格・導線を再設計していれば、発売中止にはならなかったの
かもしれない。
Appleだって、自分をハードウェアメーカと定義している。端末 (スマフォ/タブレッ
ト/PC)の組み立ては外注していて、自分がやっている事は、企画とLSI/CPU設計、直
販店運営、iTune運営等々なのに。
日本人は、製造ラインを持たない企業はハードウェアメーカとは定義しないだろう
が。
でも、米欧の企業は、それでも、自分をハードウェアメーカと定義する。
そして、日本のハードメーカは欧米のハードメーカに負けている。
同じ間違いを、又、繰り返すのか。

2) CES2016でのニコン
去年のCESで元気があった日本企業は、精密機械の会社。簡単に言えば、キャノンと
ニコン。
電気メーカは、韓国・中国に追い上げられて (圧倒されて)、いまいち、元気がな
い。
一方、カメラメーカは、韓国・中国にはいないので、まだ安泰。GoPro等の新しいカ
メラメーカは出てきたが、方向が違う。
スマフォ等に市場を侵食されてはいるが、高級一眼レフという他を寄せ付けない世界
を作ったか。
精密機械は羨ましい、と思ったものだった。
でも、昨今の状況を見ると、そうではなくなったか。

3) キャノン・ニコンはソニーの二の舞か?
かつて、ソニーはその気になればiPodの商品化はできた。「街でも音楽を聴きたい」
という人間の衝動を第一にしたならば、ソニーはウォークマンを作ったろう。でも、
CD部門との競合を避けたたね、ソニーはiPodを作らなかった。その結果、ソニーは、
CD売上を減らしたし、ウォークマンで持っていた市場さえ取られた。
キャノン・ニコンは一眼レフカメラというセグメントで盤石のポジションをエンジョ
イしたが、一つの使い方・土俵・導線に固執して、すぐ横にできた新しい土俵・導線
に移ることを拒否し続けるのだろうか。
その先は、どうなるかは予想できるが。

4) サービスプロバイダ ⊃ ハードベンダーが、ついにカメラ業界にも浸透
今や、世界最大のサーバ製造業者はFacebook, Google, Amazon等々である。統計上
は、HPE, dell, Cisco等ではあるが。
Facebook等は、独自仕様のサーバを台湾で組み立てさせ、それを全量引き取ってい
る。外販しない。だから、統計上、出てこないだけである。
実質的には、サービスプロバイダーが機器ベンダーを喰っている。内蔵しつつある。
タブレットの世界でもそう。AmazonはKindle・Alexaで、Googleはアンドロイドで、
消費者のインターネットの入り口をつかんでいる。
今や、マーケットの主導権を、より強く持っているのはサービスプロバイダである。

さて、SnapはIPOで得た資金で何をするか?
日本のカメラメーカを買収する?、
それとも、台湾で一眼レフカメラ組み立て業者を育成する?
それとも、米国でポラロイドに大量発注する?
簡単には行かないなのだろうが、日本で早期退職した人が、台湾・米国企業で就職と
いうパターンもあるし、結局は、時間の問題だろう。そのストーリは、既に家電・半
導体で経験している。

いずれにせよ、キャノン・ニコンには、「これは自分の領域ではない」などと言わ
ず、人間の衝動に愚直に応える事を考えてもらって、換骨奪胎して再生を図ってもら
いたいものです。
もう、「チーズはどこに行った?」などと、自問自答している余裕もないでしょう。